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■諸葛孔明起源説
 饅頭の考案者として最も有名な説は、中国の三国時代(220年〜280年)の蜀の宰相諸葛孔明が考案したという説。
『事物紀原』『三国志演義』など中国の文献で伝えられている由来によれば、
《孔明が南方征伐に出陣し、反乱を起こした蛮族の王、孟獲を帰服させた帰途のこと、孔明軍の先鋒が国境にあたる瀘水(ろすい:中国の地名)に差しかかると、にわかに黒雲濃霧が立ちこめ、川の水面から起こった狂風が砂礫を巻き上げ、兵士に吹き付ける。到底渡れたものではなく、孔明は孟獲を召して理由を尋ねる。
孟獲が言うに「これは、この川に住む猖神(荒れ狂う神)の仕業であり、鎮めるためには、49個の人の首と黒牛・白羊を生贄として捧げる祭礼が必要」なのだと言う。
それを聞いた諸葛亮孔明(しょかつりょうこうめい)は、「そんな悪習がまだ残っているのか。多くの敵を殺し、味方を失ったというのに、これ以上殺すなどできない」と、これを拒否。そこで、料理人に命じて小麦を練って皮を作り、牛と羊の肉餡をくるんで、人頭に見立てたものを生贄として祭礼を行ったところ、川の狂乱はやみ、孔明軍は帰還できた。》
という伝承である。
 実は、この説は、それらの書物を書かれた時代を考えると、かなり怪しいという学者(龍谷大学経済学部教授:竹内 真彦氏「諸葛孔明と饅頭(マントウ) 饅頭誕生異聞」参照)もいて、鵜呑みにはできないが、三国志演義に書かれた由来は興味深く、いかにもありそうな説として好まれ、定着している。

■蛮頭から饅頭へ
 その際の、小麦粉をこねて中に羊や豚の肉を入れて蒸し上げたものを「蛮頭(ばんとう/蛮族の頭を意味する)」と呼び、最初は水に投げ込んでいたが、その後供えたあとで食べる方式になり、食物を意味する「饅」の字を用いて「饅頭(まんとう)」と変化したとのこと。日本に伝わると、「頭」を訓読みして「まんず」、それが転じて「まんじゅう」になったといわれてる。大きさも、人頭のリアルサイズから、だんだん食べやすく小型化していったとされる。ちなみに、ここでいう「饅頭」は「まんじゅう」ではなく「まんとう」と呼び、日本の肉饅(にくまん)が近い。現代中国語では「包子(bāozi)」と称するのが一般的であり、「饅頭」とはほとんど言わない。


●日本の饅頭の起源
 日本の饅頭の起源には2つの系統がある。ひとつは臨済宗の僧龍山徳見が1349年(南朝:正平4年、北朝:貞和5年)に帰朝した際、その俗弟子として随伴してきた林浄因が伝えたとするものである。当初林は禅宗のお茶と食べる菓子として饅頭を用いる事を考えたものの、従来の饅頭は肉を入れるため、代わりに小豆を入れた饅頭を考案されたと言われている。
 もうひとつの系統は、林が伝えたとされる年より100年ほど遡る1241年(仁治2年)に南宋に渡り学を修めた円爾が福岡の博多でその製法を伝えたと言われる。円爾は辻堂(つじのどう=現・博多駅前一丁目)に臨済宗・承天寺を創建し博多の西、荒津山一帯を托鉢に回っていた際、いつも親切にしてくれていた茶屋の主人に饅頭の作り方を伝授したと言われる。
 伝来当時は現在の饅頭につながる甘い饅頭と、主として野菜を餡とした菜饅頭の二種類が存在していた。後者は現在の肉まんに近い物と考えられているが、仏教の影響もあって、近在以前の日本ではもっぱら野菜が餡として用いられた。仏教寺院ではいわゆる点心(ここでは軽食や夜食)の一種類とみなされ、軽食として用いられていた。しかし、米飯や麺類が主食として存在し、とくに麺類(うどん、そば、素麺など)が早くから軽食として存在した一般社会では、製法の煩雑さなどからほとんど定着せず、甘い饅頭や麺類のように菜饅頭を専門の業者が製造する事もなかった。ただ、寺院における食事の記録には記載されている事が多く、江戸時代に入っても『豆腐百珍』に「菜饅頭」として製法が記載されている事から、寺院等では軽食として長い間食べられていたようである。
饅頭は、胃腸などの薬として、さらに皮を粉状にして油と混ぜたものは、ヤケドなどに貼る外用薬としても用いられていたらしい。
 14世紀の日本で定着したのは、野菜入りの「菜まんじゅう」。後に、日本人の好みに合う豆のあん入りに変化する。特に、あずきの赤色には魔除けの力があると信じられ、お供えや行事に用いられた。全国の城下町には名物まんじゅうが続々と誕生。室町時代の『七十一番職人歌合』には、まんじゅう売りが「砂糖饅頭と菜饅頭」を売る姿が描かれており、この頃からすでに甘・辛など味のバラエティを楽しんだと思われる。
 肉入りの中華まんじゅうが普及するのは、肉食が解禁になる明治以降のこと。昭和2年には、中村屋が「肉入り・餡入り」の中華まんじゅうを販売している。
 以後、様々な形に変化し、餡の中身も、時代に応じて新たな食材が考案され、身近な軽食として普及している。

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